収益不動産(投資用物件)の収益計算において、「満室稼働すると賃料は年間○○万円なので、表面利回り▲%!」という不動産会社の説明を見ることがありますが、不動産鑑定士の感想としては「多少は合ってはいるけど100点満点の説明ではないな」とよく思います。
不動産鑑定評価基準によれば、収入は以下の項目が挙げられます。
① 貸室賃料収入:文字どおり賃貸(専有)部分から得られる賃料収入
② 共益費収入:実質的に賃料を構成する部分があると考えられるため、収入項目に計上
③ 水道光熱費収入:賃借人から水道光熱費を徴収している場合には計上
④ 駐車場収入:駐車場、バイク置き場、駐輪場から得られる収入
⑤ その他収入:自動販売機、アンテナ設置料などの付帯収入
⑥ 一時金収入:礼金、更新料等の一時金収入(敷金・保証金は除く)
⑦ 空室等損失:空室が予測される場合、空室等による損失金額を計上
⑧ 貸倒損失:賃借人の賃料不払いにより賃貸人が被る損失を補填するための金額を計上
注意すべき点や不動産会社の説明と異なる点は、②・③・⑥・⑦でしょうか。
②は、賃借人から徴収している共益費が全額管理費として支出されている場合には計上しないケースもありますが、実際には賃料の一部を構成している(全額が管理費として支出されている訳ではない)ケースがほとんどなので、原則的には共益費を収入として計上します。先日、共益費を考慮しない鑑定評価書を拝見しましたが、全額管理費とし支出されていることを確認されたのか、少し不安です。
③は、共同住宅の場合は賃借人から水道光熱費を徴収することはケースとして少ないですが、オフィスビルの場合は注意が必要です。賃借人から徴収する水道光熱費が電力会社等に支払う費用より多い場合には、結果として収入に該当することになるので、収入・費用の額を分析することが必要です(支払う水道光熱費より多く、水道光熱費を賃借人から徴収するビルオーナーもあるということです)。
⑥は、賃借人から入居時に受領する礼金・権利金、更新時に受領する更新料を計上します。当該一時金は建物オーナーが受領できる場合と、不動産管理会社の収入になる場合と分かれておりますので、建物管理に関する契約内容を細かく把握することが重要です。敷金・保証金は収入ではないため、基本的には計上しません。この項目は不動産会社の査定においてはあまり考慮されていないと思いますが、結構な金額になる場合もあるので要注意です。
⑦は、空室による賃料収入の減少なので、実際には収入を生むことはないのですが、マイナスの収入として収入項目に計上します。オフィスビルや賃貸マンション等の市場水準を日頃から把握することが大事です。
また、⑧の貸倒損失は、通常は敷金や、最近は保証会社による保証等で、賃借人の賃料不払いは回避することが概ね可能なので、貸倒損失を計上するケースは実務上はほとんどないと言って差し支えないかと思います。
以上、不動産鑑定における収入項目を挙げましたが、不動産会社の査定や説明とは多少異なると思います。ですが、どれも不動産の価格に影響を与える項目ですので、収益計算においては欠かせません。