2023年1月30日、タワーマンションなどを活用した過度な相続税の節税を防ぐため、不動産の評価方法の見直しを検討する第1回目の有識者会議「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議」が開催されました。国税庁に記載されている議事要旨には以下の事項が記載されております。


①評価方法を見直した結果、評価額が時価を超えることとならないようにする配慮が必要。

②価格乖離の問題は、タワーマンションだけでなくマンション全体に言えるのでないか。見直しの範囲を一部のタワーマンションに限定すべきではない。

③市場への影響にも配慮すべき(一戸建てとのバランスにも配慮し、急激な評価増にならないようにすべき)。

④時価と相続税評価額との乖離の要因分析を行うに当たり、統計的手法による分析が有用ではないか。

⑤マンション市場は建築資材の価格が高騰しているから、コロナ前の時期における実態も把握する必要がある。


ポイントとして、①については当然かなと思います。現在においても、相続時に相続税評価に基づき相続税を払ったものの、後に「相続税評価>時価」と判明し、「相続税評価>時価」であることを不動産鑑定評価を活用しつつ税務署に交渉し、支払った相続税額を還付請求するケースがあります。本件においても、ルールを変えた結果、「相続税評価>時価」である事案が頻発してしまいますと、現場である税務署は混乱してしまうので、その配慮は当然かなと思います(不動産鑑定士的には仕事は増えるのですが。。。)

②についても仰るとおりと考えます。前回のコラムにおいても記載しましたが、タワーマンションでなくとも、相続税評価と時価の乖離は約2.8倍程度あり、仮に賃貸していた場合にはもっと乖離が広がります。つまり、タワーマンションだけでなく中規模程度のマンションでも、節税は可能となっているのが現状です。

とはいえ、③のとおり、相続税評価額が大幅に上がるような改定であれば不動産市場にマイナスの影響を大きく与える可能性もありますし、また一般庶民の相続にも影響を与え、混乱が生じてしまう可能性があると思います。評価額がそれなりに上がるような改定になったとして、仮に被相続人が都内のマンションに住んでいた場合(投資用ではなく居住用として)、それだけで相続税が発生することになり、富裕層でなくとも一般庶民の納税の機会が増えることとなり、端的言えばまた増税となったということになってしまいます。


今後も有識者会議は開催されていくと思いますし、マンションの評価方法の変更は避けられないコースだと思います。大幅な相続税評価額増にはならないと思いますが、私の個人的な予想(大したものではないです)は以下の点が改正で考慮されるのではないかと思います。

・相続発生時に、被相続人や相続人が居住していた場合には、評価変更の対象外(節税ではなく居住用のために購入していたため)

・相続発生時には賃貸していたものの、相続発生の○年前から保有・賃貸していた場合には対象外とするか?(節税ではなく、あくまでも不動産投資として保有していた?)

・相続発生時には賃貸していたものの、居住せずに賃貸していた理由が、所有者である被相続人が老人ホーム等に入居していたから、という場合はどうするのか?

・その他、相続したマンションに関して、○年以内に相続人が居住することが明らかな場合はどうするのか?


このテーマについて、また進捗があればコラム等で取り上げて行きたいと思います。