地価公示における東京圏の地価は、新型コロナウイルスの影響で下落した2021年1月を除けば、2013年以降上昇傾向にあります。また、2013年1月には10,000円超であった日経平均株価も2024年3月には初めて40,000円を超えました。金の価格についても、2013年1月は5,000円程度でしたが、2024年3月は11,000円を超え、10年程度で倍近くの価格となりました。

従って、不動産だけでなく、有価証券や金の価格も高騰し、富裕層だけでなく一般の方々についても保有資産が増加していると考えられますので、気になるところは「相続税を支払う人も増加しているのか?」という所です。

上記グラフは国税庁が公表している「令和4年分 相続税の申告実績の概要」からの転載ですが、2015年(平成27年)に相続税を課された人の割合は8.0%(つまり、亡くなった方を100人とすると、内8人の相続に対して相続税が課税されている)でしたが、2022年(令和4年)では9.6%まで上昇しており、おそらく2023年も上昇しているものと考えられます。なお、2014年(平成26年)は4.4%ですが、翌2015年に8.0%と上昇しているのは、2015年に相続税制が改正され、基礎控除が「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」⇒「3,000万円+600万円×法定相続人数」と変わったことに起因しております。

勘がよい人であれば気付くかもしれませんが、相続税の課税割合は9.6%ということですが、ポイントとしては全国平均の数値であるということです。つまり、地価が高い東京圏であれば、相続税の課税割合はもっと高くなるのでは?ということです。東京国税局でも同様に公表されており、東京国税局管内における相続税課税割合は以下のとおり2022年(令和4年)では15.0%でした。

さて、ここで気を付けなければならないのは、「相続税を支払う人が15%ということは、残りの85%の人は相続税がかからない訳だから、85%の人は相続時に何もしなくてもいいんでしょ?私の親はそんなに資産もってないから絶対85%の方に入るし、安心安心。」と思ってはいけないことです。

例えば、小規模宅地等の特例は、居住用宅地であれば330㎡まで評価額を80%減額するという特例ですが、小規模宅地等の特例を適用することにより相続税がゼロになり、結果として85%の層に収まったということは往々にしてあると思います。しかしながら、小規模宅地等の特例を適用する場合には、税務署への申告が必要となります。

つまり、相続税を支払っていない85%の方々は2種類あり、「①特例を適用し、税務署へ申告することにより、結果として相続税がゼロになった。つまり申告しないと相続税がゼロにならない。」「②元々相続税はゼロであり、税務署への申告は特段不要」というものです。ですので、相続税の対象にはならないだろうから安心して何の手を打たないのではなく、日ごろから専門家等に相談して、自分にいずれ起こる相続がどの程度のポジションにあるのか把握しておくことが肝要かと思います。